かすかな(3月)
唐草フウ


私以外の人間がグレーの幾何学柄になって
頭を垂れたまま小さいネオンを見ている
国道沿いを走っている事はわかってないだろう

少し開けた窓から
春ぼこり
乾いた目が更に
泣かせてくれない
涙を欲しているように
何本のゆびを空に向けて待っている まだ冬の木

今年はじめての桜が
ちょっとだけぽっぷこーんみたいに
まだ所在なさそうに
私だけが見ている
春の幕はまだこれからだと
鳥は見抜いて歌にする

私以外の人間がグレーと臙脂になって
渇いた目を潤ませてフキダシを送り合っている
暮色蒼然のかすかな音は聞こえていないだろう





自由詩 かすかな(3月) Copyright 唐草フウ 2025-03-24 21:53:39
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