かすかな(3月)
唐草フウ
私以外の人間がグレーの幾何学柄になって
頭を垂れたまま小さいネオンを見ている
国道沿いを走っている事はわかってないだろう
少し開けた窓から
春ぼこり
乾いた目が更に
泣かせてくれない
涙を欲しているように
何本のゆびを空に向けて待っている まだ冬の木
今年はじめての桜が
ちょっとだけぽっぷこーんみたいに
まだ所在なさそうに
私だけが見ている
春の幕はまだこれからだと
鳥は見抜いて歌にする
私以外の人間がグレーと臙脂になって
渇いた目を潤ませてフキダシを送り合っている
暮色蒼然のかすかな音は聞こえていないだろう