迷子
たもつ



あなたの耳の中に
階段があった
手摺はないけれど
転ばないように
わたしは一段一段
下りていく

一番下にたどり着く
幼いあなたが
膝を抱えて泣いている
もう大丈夫だよ、と言って
階段を上る
わたしにしがみつく手は
確かにあなたの
小さな温もりだった

穴の外に出ると
安心したように眠っている
あなたの横顔が見えた
何年一緒に暮らしても
うまく伝えられないことや
思いがお互いにはあった

わたしもまた
わたしのどこか奥の方で
迷子になってる



自由詩 迷子 Copyright たもつ 2025-03-21 06:23:53
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