さくら 咲く RUN
阿ト理恵

春はあげもの♪︎と云いながら鯵フライと千切りキャベツを益子焼のお皿に盛り付けしているきみのギャグに突っ込まないでいたら、こうゆう時に、やうやう白くなりゆく、って枕草子をそらんじてほしいのに…、と口を尖らせてぼくに早口で逆つっこみするきみ。ぼくは、どう突っ込んでいいかわからなかったんだけど。まあ、春だから。猫がガラス越しに鳥とおしゃべりしていた。あまりにかわいい猫の声に、きみは、ねぇなんてしゃべってるの教えてミーちゃん教えてよぉミーちゃん、と猫にしつこく話しかけている。まあ、春だから。洗濯機で洗ってしまって縮んだぼくのセーターをラッキーと着てしまうきみ。まあ、春だから。信号が青だよ、と云うと、緑です!と言い返すきみ。コーヒーはブラックだと云うぼくに隠れて砂糖とミルクをだばだばいれて飲むきみ。まあ、春だから。毎晩、欠かさず月はどこ?と聞いてくるきみ。自分で探せよ、と思いながら、教えてしまう。まあ、春だから。ぼくが、本屋で思わず買ってしまったTo be or not to be be. That is question.と歩行者用信号機風に並べて印刷されたトートバッグを見せたら、翔べるか翔べないか!ってことよね!ってどや顔したけど、おいおいシェークスピアを読んでいないことがバレバレなんだよな。生きるべきか死ぬべきか それが問題だって超有名なセリフなのにさ。まあ、夏になってもかわらないきみとぼくは迷うことなくずっと暮らしていくつもりだ。




自由詩 さくら 咲く RUN Copyright 阿ト理恵 2025-03-20 23:50:40
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