骨のうた
佐々宝砂
死体は歌わない、
いや、歌わなくもないか、
ひうひうと風に吹かれて、
風葬の肋骨が歌う、
でもおれがほしいのは肋骨ではない、
きちんと歌うのは、
腕の骨でも背骨でも肋骨でもない、
きちんと歌うのは、
脚の太い部分の骨だ、
その骨がもっとも丈夫で美しく歌うのだ、
おまえは歌が好きだった、
おまえは罪人として殺された、
だからおれはおまえの大腿骨を二本とる、
おまえの骨は笛となり罪を空に飛ばすだろう、
おまえの骨に残る善なるものをみなに施すだろう、
きれいにさらされた骨をさらに洗い、
中身をほじりだし、
やすりをかけ、
磨き上げ、
革と顔料で飾り立て、
父から教わったように、
脚の笛、骨の笛、カンリンを作る、
ああ、
おれはこの骨を吹く勇気があるだろうか、
問題はそこだ、
おれは美しく磨かれた骨を前に、
嘆息する、
嘆息する、
でもおれはこの笛をきっと吹き鳴らすのだ、
おまえの罪のために。