柔かな闇
栗栖真理亜

煌めく刃
一直線にひかれた赤い線が
柔い肌のうえで徐々に滲んでゆく
冷たい雪のような感触が
私の背筋から流れては消える

静かに 
静かに
時間ばかりが過ぎて
何もかもが動こうともせず
立ち止まったまま

月明かりに照らされた闇は
涙の意味すら知ろうともせず
そ知らぬ顔で私を見下ろしている
微かなボンボン時計の針の音が
私の最期を急かすように
耳元まで聞こえてくる

嗚呼、こんなにも生きることは苦しい
人はみな傷付けあい
泥まみれになりながら生きている

人を笑うことを生活の糧として
弱きココロをひた隠しにしている柔かな闇よ
私の血潮でこの世を清めたまえ


自由詩 柔かな闇 Copyright 栗栖真理亜 2025-03-18 00:17:26
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