めざめよ
あらい

ひたひた
ふかくいきを吸うたび
靴裏にこびりつく、ゆく手
わたしはかすかに確かめている
また 焦げた匂いがした)
それで
カフェで次の予定をひらきゆく
前小節にひっかけたまま
ゆびさきで募る熱を
羽音鼓膜おくに

さえずる雲雀は、瓦礫に満ちている 気が傾ぐ
ひのあたらないところで 意味は刻めなかった

背後でゆれる街灯が 足を蹴っても、脈を積む
ツブテも跳ねる息を、指先も、なぞる
℃をたしなめるよう(触れた
まだ、そこに)
ひかりはじめた腕を伸ばしても。遠い
とおすぎる亡骸ではない、書き添えないことで
ほどくことなくそっと くいとめた残貨が

沈黙を編んでいた
こえ太るそらを)
視線を上げた弾み

鉄格子のつらに、置き去りのひびがまだ
したたるだけ 水平線を おしあげ
送信できない舌でたったひとこと、潤む
秒針が/まどろむに/帰依る)
群れが舞う。うれうように 灰のように
さっきの乗客はいつでも、なだれ混む
吹きぬける風が窓にうつる顔はかすがい

ひとつ ふたつ
うごきだしている
ボタンをおす
「またね」
手を振った拍子で
宙が残る

ひとひらに冷たい むこう岸はちいさな情動
まちかどに立ち尽くし濡れたように夕なぎが
しずかに しづかにゆらめき、とり逃がしたのは
どっちだったか。かれらの時間とわたしの時間

てすりを握っている なめらかでかたい 
そのさきに街の色が わずかに濃くなる

戻らぬ場をわすれゆく Water Shadow
わたしの意識はまだ、湿った喉につかえる
溶けゆくレースカーテンはまぶたに打ちつける
自らをむさぼる目は 追いつこうとするのに


自由詩 めざめよ Copyright あらい 2025-03-12 02:45:50
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