すみか
由比良 倖
あなたは、透明な入り口。遠い入り口で泣いている。
私には近況なんて無い。いつも深い森の中にいて、
でも今日、そこには太陽の光が差した、
珍しいことでは、ないけれど。
それだけのことが私の社会的一生だとしたら、
私は透明で躁鬱な社会を生きていける。
あなたの求めは、求めること、
そのものなのだから、苦しみと痛み、
それがあなたの夢なんだから。
きっと、消える宇宙の、最期には、
あなたの宇宙は透明さを増し、
そうして私の一生は一生を遡り、
光で満ち足りるだろう。
私の森には雨が降り、雨が降り、
そうしてあなたは今日も泣いている。
きっと、今この瞬間、あなたは壊れかけていて、
被害者のいない銃弾が降り、あなたは
私に笑いかけ、そして私もあなたも消えていくだろう。
痙攣するように、私は花になり、今も未来も無い、
海も未来も空も無い、私の眠りの中で、
私は目覚めるだろう、そのときあなたは、
まるで見えない涙のようだろう、あなたが泣き止むとき、
あなたはもう何処にでもある、夢でしかないだろう。
そう、ならば良心は何処にあるのでしょう?
……意味を知らなければ、世界の、生きていることの。
私は、間違っているのだろうと、目の奥を潰して、
あなたの枯れる手に、水を遣ります、
私は深い、森の中に棲んでいます、長い、長いこと。