Poets on the Road ── 旅立ったchori君へ
服部 剛
久々の一人旅で
新幹線に乗る
列車は加速し始め
多摩川に架かる空色の丸子橋を過ぎ
東京は背後に遠のいてゆく
あの日
君を見送ったのも
品川だった
かろやかに君は
こちらをふり返り、手をあげた
なんだか距離なんて
あってないようなもんだ
なんて気がするのは
時速300kmで走る
のぞみの空間の中で
酎ハイの酔いが
体内に回り始めているからか
この旅の理由が
今年の夏に若くして旅立った
詩人の君の
追悼イベントへ赴くゆえか
列車はふたたび加速し
名古屋のMIRAI TOWERは
背後に小さくなってゆく
――chori君
君と会ったのは
20年間で10回にみたない
けれど
詩人の君の面影は
脳裏に刻印されているよ
2本目のチューハイを空けて
本を読んだら
もう
巨きな灰色の京都駅
減速する車窓の青い秋空に
うっすら灯る
詩人の星と
地上に残された僕等は
透きとおる縁の糸で
そっと結ばれている気がする
君の旅立ちを知った時
ふいに、溢れ出た涙
我が家で玩具の鍵盤が
ひとりでに鳴った、挨拶の音
君の詩集と
想い出の場面たちを入れた
旅の鞄を背負い、立ち上がる
列車のドアは開き
僕は京都駅のホームに降りた