衒学鳥
中沢人鳥
赫赫たる蒼穹に舞う翡翠の影、 羽摶き一閃、風を裂く翮の響。 風韻濃密なる虚空に、その声は如き翡翠琴の奏。 哢声は黄鐘調に流れ、 万象の縫い目を紡ぎ、永劫の詩篇を描く。蒼茫たる雲海を翔けるそれは、 神霊の如き尊容をたたえ、 霜天に一筆、銀砂を散らすかの如し。 霓裳羽衣をまといし姿、 その煌めきは幽邃なる森羅をも射抜く。闇黒の宵に佇む梢、 梢に佇む影は、剣閃の如く鋭利に、 万籟の声を呑み込みつつ。 無声の叫びは天地を貫き、 その翳りは無明の淵より立ち上がる。彼の鳥は、ただ一羽の幻影にあらず。 無数の翅音、千々の羽搏きは、 人寰の理を嘲笑い、 滔々たる時流を飛び越える。塵芥の如き市井の喧騒を後に、 幽玄を裂きながら、 その軌跡は、無窮の星図に描かれる。 天穹の彼方、焉何に向かうとも知れず、 翼はただ風を孕みて、 悠然と彼方へ、彼方へと。羽翮の一枚ごとに宿るは、 無数の夢想、虚構、追憶。 光と影の交錯する狭間、 いざないの彼方にて、 鳥は言う
——「永劫の飛翔こそ、 我が宿命なり」と。
彼方に去りゆくその影を追い、 人は足を止め、眼を閉じ、 一瞬の永遠に耳を澄ます。 その声、果たして夢か現か。 否、鳥は今も飛び続ける。
蒼穹の涯に、無言の詩を描きつつ。