Bonds
ホロウ・シカエルボク


https://www.youtube.com/watch?v=D5rDUcWIDcg

境界線の死体の上にベタベタと張られたシール
散乱した呪物の破損具合が叫んでいる明日
君は昨日死体安置所で何をしていた?
指が一本無くなっていたってそこで働いてる知り合いがぼやいてたよ
街には曇り空の怨霊がとり憑いて晴天でも居心地が悪い
飛び降り自殺した女は地面に着くころには二人になってた
こんなものは真実でもなんでもない、と
目つきの怪しい男が地下鉄の前に仁王立ちして叫んでいる
現実主義者は自分が話したいことしか話さない
整えることは出来るけれど何かを生み出すことなんて出来やしない
俺はマーケットで半額のシールが張られた食いものを探している
一階が店舗仕様の巨大マンションの最上階では
浮気した旦那を嫁さんが滅多刺しにしている
愛だの夢だの未来だのって声高に喚く歌が多過ぎる
定型文が大蛇のように国をひと巻きしている
そこから逃れることが出来る人間は一握りしかいない
俺は始めから世界の外に居る
彼らの出来るは俺には何の価値も無い
野良犬の脚を戯れに切り取るような真似を繰り返していると
そのうち誰かに舌を引き千切られるだろうさ
悪魔たちよ、鬼たちよ、ここはお前らの世界だ、堕ちた神たちよ
矮小な真面目さの中で右往左往する現代のコメディを堪能するがいいさ
俺は炭酸飲料を飲んで喉を鳴らしている
くだらない理由で自死を選んだ女の亡霊がずっと話しかけて来るけど
声が小さ過ぎて何を言っているのかよく分からない
あらゆる種類の呪文、祝詞、祈り、手当たり次第にぶちまけてみなよ
先天的な呪詛なんて絶対に取り除けない
気休めに金を払うなら抱える覚悟をした方がマシだぜ
どんな境遇だろうが牙を失わなければ噛みつくことは出来る
廃車が積み上げられたままの自動車工場の廃墟で
繋がったままあの世まで逝っちまった若い男女が居た
その工場は人間の居住区じゃない山中にあったものだから
発見されたときには廃車の中で角煮みたいになってたって話だよ
振舞おうよ、皆で肉を食おうぜ
肉を噛みちぎる時ぐらいさ、本能を思い出せるのは
なぜ生まれて来たのかって考えることないかい?
あんたの言う価値観ってなんだい、そいつはただ社会的ってだけのものじゃないのかい
田舎だろうと、都市部だろうと、平屋住まいだろうと、タワマンの最上階だろうと、人間の本質は変わることがない
情報の中で盲目になってるやつの言うことなんか聞いてもしょうがないんだよ
旧態依然のシステムの中で何ひとつ昔みたいに動かせずに歪みばかりが生じてしまった
この世で一番正直なのは歪みだなんてもう目も当てられやしない
ペラッペラの肩書が外れたときあんたに残されたものはなんだい
それがなにかなんて別に知りたくもないけどもよ
単純明快なものなんて無い
引っかき回して並べ直して試行錯誤の末にようやく手に入れられるものだ
そこに書いてあるものを飲むこむだけじゃなんにもならないぜ
俺のやってること見てればわかるさ
そいつの為に長い長い時間を生きてる
見たいなら見せてやるよ、見たいなら見せてやるさ
ようく見ろよ、俺はいつだって
本気でそのことを伝えようと無駄な足掻きを続けているんだ
死体どもよ、起き上がれよ
そして俺と共に踊れ、叫べ、死の定義なんて昔ほどしっかりとはしちゃいないさ
誰が生きていて誰が死んでるんだ?先に死んだ連中の方がずっと
眩しく輝いているのは果たして本当に俺の気のせいなのかい
アンデッド、ただそれだけさ
それがこの現代の通念ってもんじゃないのかい
隣のやつの脳味噌を食らったところで、得られるのは体面体裁だけさ
だから、そうさ、世の中には芸術ってもんが存在してるんじゃないのかい
本当の意味で生きるのに貪欲な連中が
そこに脳味噌をぶちまけているんだよ、ほらお前ら食らえって
俺もそれを食らった、たくさんの脳味噌を
おかげで厄介な真剣さを失わないまま大人になることが出来た
俺は始めから世界の外に居る、ああ、
敵は多いけど居心地はそんなに悪くないぜ


自由詩 Bonds Copyright ホロウ・シカエルボク 2025-01-18 16:46:38
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