お見舞い
そらの珊瑚

すっかり葉を落とした樹の枝々が
落ちてくる曇天の空を手を広げて支えている
これから
冬へとむかう日々は時に
こころさみしく
或いは
神様のきまぐれで
ぱああ、とみるみる空が晴れれば
なにやら希望が差してもくるようでもある

昨日お見舞いにもらった赤い林檎は
その身の内からしみだしてくるお日さまのつやをまとい
まるかじりするのが一番美味しいのだろうけれど
病身の父には無理な話だった
すりおろした林檎は
痛々しげに茶色くなり
おせじにも美味しそうではなかったけれど
美味しそうだよ、と
白く着色するように
わたしは笑顔でひとつ嘘をつく

出窓に来て止まる小鳥は
父にいわせるとそれもお見舞いのたぐいだった
小鳥の名前はトリコとトリオ
鳥の見舞いはいいぞ、なんにも訊かないからな
こっちも無理してとりつくろうこともない
父の嘘は真顔だったから
或いは
真実だった


自由詩 お見舞い Copyright そらの珊瑚 2024-12-13 12:29:04
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