街角のかたつむり
リリー

 
 昨日届いた喪中葉書
 十二月が、いそぐ街道で
 歩むわたしの跡に光っている
 薄いオリエンタルブルーの粘液

 これは体のタンパク質と
 多糖分と大量の水分
 角が右も左も交互にのびて
 スニーカーや革靴に踏みつけられないように
 のがれながら前進する

 居心地のいい湿気たところにばかり居られない
 
 いつもの駅で
 電車を待つ人の列から外れた少年が
 両膝を抱えて座りこみ眠っている
 誰からも声を掛けられず
 彼も、巨きなかたつむりだろうか

 わたしも眼を瞑れば時に
 ビル風も凍雲も
 ざらざらと意識に見え隠れして
 ちっぽけな臓物の上には、
 にんげんの影をおとしていく

 熱くなってしまう頭を引っ込めて
 地上の振動で響いてくる圧力から解脱し
 心には、しずかな明日の空いろと
 裸木の枝を仰ぎ見る
 
 


自由詩 街角のかたつむり Copyright リリー 2024-12-07 11:47:29
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