吉岡実をもっと吉岡実にするために
室町 礼



四人のリベラルサヨク
雲の見えるタワマン暮らし
ときに女装して
釘バットをもち
憎しみをこめて
裸体が映った鏡を叩く
駅伝の号砲が鳴るまで
一人はうつろ
一人はがらんどう
一人は空疎
一人はすからかん



四人のリベラルサヨク
夜の散歩に出かける
一人は大学教授の姿で便秘の悩みを子安地蔵に打ち明ける
一人は詩人の姿でお尻に蜂蜜を塗り愛犬為五郎に舐めてもらう
一人は評論家になって飯窪春菜の個展をこき下ろしにゆく
一人は三人を監視するために豚舎のブタと交信する
四人一緒にタップダンスを踊ったことはない




四人のリベラルサヨク
めいめいの務めにはげむ
喪服の上に水着を
ズボンの上にパンツをはき
一人が一人の背中に乗り
屋根にあがった一人が配達人を見張り
他の一人がベルを鳴らすとき
深夜の人里から押しよせる公金の洪水
四人はいっせいに立ちあがる
邪悪な四つのインスタグラム
おいしいシステムと天井知らずの公金
そこに穴があらわれ
紙幣がふりだす



四人のリベラルサヨク
夕べの食卓につく
舌のながい一人がフォークを配る
テレビコメンターの一人の手が酒を注ぐ
他の二人は手を洗いにゆき
今日のウソと
未来の暴露に怯えながら
同時に双方向に舌を出した
小児性愛者のソテーを皿に盛る
ウソもほんとうも
肉と骨のようにからみあい
三人は食べなかったといい
一人は黙って三人をみて首をふる



四人のリベラルサヨク
タワマンの屋上に上り
烏克蘭(ウクライナ)の煙をみておおはしゃぎ
生涯愛と縁がないので
世界より一段高い所で
首をつり共に嗤う
されば
四人の骨は冬の木の太さのまま
縄のきれる時代まで死んでいる




自由詩 吉岡実をもっと吉岡実にするために Copyright 室町 礼 2024-11-26 17:05:51
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