赦されて  
リリー

 閉じたビニール傘から飛び散る
 雨滴
 会社の広大な敷地内を車と自転車が往来する
 東の正門で守衛室に社員証を提示しても
 配属先の建屋へは延々と
 アーケードの歩道を歩き続ける
 
 さっきから 
 どこを飛んでいるのか
 ヘリコプターの音が
 眼のまえの風景を狭くるしく圧している
 湊鼠の天幕はられる上空を
 孤独な大きい蜻蛉は過ぎて行く
 秋入梅の朝

 人にまみれて進む足許の
 潰れた小さなカマキリの死骸を跨いで
 なぜか私は問うてみる
 何故 歩いているのだろう
  
 私の生は、どうしようもなく ぶざまで
 ひとには見せられない自分をいつも
 肯定している
 黙って目をとじれば
 クスクス低い声で笑いだす
 これからも
 私にゆめを赦すために

 
 


自由詩 赦されて   Copyright リリー 2024-11-09 17:33:35
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