落日
リリー

 
 鈍色の民家の瓦と重なって見えた
 黒味帯びる朱をのこすだけの
 散り落ちぬ大輪のバラ

 秋立つ日
 貴女はうつむいて想いに耽り
 天蓋の星たちが数回瞬く間の短い夜を
 すごしているのか
 それとも
 目覚めれば
 風とやさしく語らって今朝も 
 へのへのもへじの化粧を
 したのかも知れない

 花は無防備に枯れ行くだけだ

 私は水に飢えて
 鉄屑の匂いを嗅ぐ様な落日を
 くり返しむかえている
 飢えて ことばの闇をひとめぐり
 いつか光のひとすじへ
 夕映えに、
 おもいを馳せて
 


自由詩 落日 Copyright リリー 2024-11-02 12:05:23
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