はね
おまる

羽根が送られてきた

ご丁寧に封蝋で綴じられている 差出人を書いてない封筒 ここ何日かこの羽根の事ばかり考えていた アーク森ビルの陸橋を渡る途中 ピーポ君の看板が立っている ここに漂う虚無は人生みたいに もって生まれたままで むごくて

こうしてまた会えてうれしいよ 羽根に込められたメッセージ かつてわかちあった共感や笑い 昔何が起きたのかを知っている者は徐々にその場所を譲り渡さねばならない 手元に残ったのは この悪魔みたいな羽根 もうわかりあう日はこないんだね

別れてすぐは どうしようもなくつらかったのに 少しずつ以前の自分を取り戻し快復する でも時間は止まったまま 配達員がポストに届け物を入れて去っていく どうせ自分に手紙は来ないと思ってポストを開けたらこの封筒があった 一言の言葉もなく 羽根が入って

「あなたのはねです」

羽根はついに聖性を帯びはじめ ポケットからとりだすと 鴉共がいっせいに騒ぐようになった しかしだからといって軽々しく喜んではいけない この場所はあいかわらず虚無にみちていて 自分の軀もあいかわらず虚無で だからこそ分かれ道でとまどい迷わずにはいられない

全く呆れるじゃないか これぞ都会の神髄 見え透いた嘘をいう輩で腐ってる 俺はいつだってガチだよ 全部嘘って知ってるから 何もかもバカバカしいから ガチになれる


自由詩 はね Copyright おまる 2024-10-12 10:36:04
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