はね
おまる
羽根が送られてきた
丁寧にシーリングワックスでとじられている差出人を書いてない封筒、
ここ何日かこの羽根のことばかり考えていた、
アーク森ビルの陸橋を渡る途中、ピーポ君の看板が立っている、
この場所に漂っている虚無はまるで人生みたいに、もって生まれたままで、
むごくて、
こうしてまた会えてうれしいよ、羽根に込められたメッセージ、
かつてわかちあった共感や笑い、昔何が起こったのかを知っている者たちは、
徐々にその場所を譲り渡さねばならない、
手元に残ったのは、この悪魔のような羽根、
もうわかりあう日はこないんだね、ゾっとするよ、
トラウマは新たなトラウマで治すしかない、俺たちにとっては、
別れてすぐは、どうしようもなくつらかったのに、
少しずつ以前の自分を取り戻し回復する、でも時間は止まったまま、
なぜ止まったままなのかうまく説明できない
魂のない體はただの肉と同じ、
配達員がポストに届け物を入れて去っていく、
どうせ自分に手紙なんか来ないと思ってポストを開けたらこの封筒があった、
一言の言葉もなく、羽根が入って、
「あなたのはねです」
羽根はついに聖性を帯びはじめ、ポケットからとりだすと、
鴉共がいっせいに騒ぎはじめるようになった、
しかしだからといって軽々しく喜んではいけない、
この場所はあいかわらず、虚無にみちていて、
自分の軀もあいかわらず、虚無で、だからこそ分かれ道でとまどい、
迷わずにはいられない、全く呆れるじゃないか、これぞ都会の神髄、
見え透いた嘘をいう輩で腐ってる、
俺はいつだってガチだよ、
全部嘘って知ってるから、何もかもバカバカしいから、ガチになれる