渓流の女王
レタス

ドーッドドドーッ ドドドーッ
ザーザザザーッ ザザザ ザーザザザーッ
木漏れ日の渓に透明な水が溢れる
ここ数日の夜中の豪雨で水量はいつもの3倍くらいはあった
流れが激しいとヤマメは岩の陰に隠れてしまう
秘密のポイントまでは
まだまだ渡渉を重ねて行かねばならない
膝まで浸かり足元を確認しながら慎重に遡った
川底の石がゴロリと動き
危うく流されるところだった
ようやく大岩のポイントに着いたが何時もとは様子が違う
水がモクモクと盛り上がり気泡がほとばしっていた
見えない糸を振り込むとググッグッと竿をしならせた
一気に引き上げるのは危険だった
腰の強い竿で慎重に引き寄せランディングネットに取り込むと
尺に近い見事なヤマメだった
美しい!
このようなヤマメにはここ数年出逢ったことがない
何時ものように脳天にピックを穿うがち昇天させる
鮮度を保つために愛用のナイフで腹を裂き
ハラワタとえらを抜きコンビニ袋に収めた
ウエストクーラーに収まらないので別のコンビニ袋に魚体を納め
もう一振り竿を振った
再びググッと竿がしなり
一気に引き抜きネットに収る
今度は20㎝くらいの獲物だ
その後何度も竿を振ったが反応はなかった
竿を仕舞い今日はこれで充分過ぎる釣果に胸が鳴っていた
渓を下るのも相当注意しながら渡渉した
ようやく車に到着しヤマメをクーラーボックスに収め
バッハの無伴奏ヴァイオリンを聴きながら意気揚々と家路を急いだ



自由詩 渓流の女王 Copyright レタス 2024-08-10 18:39:25
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