八月の狩蜂
ただのみきや
浮力を失くした夏を掌に掬い上げ
大地は死者と契る
数は数えるものではなく
総体として抱きしめることで
各章から噴き出す色彩の嗚咽や戦慄きすら
受肉した祝祭の肌を駆ける花びらであることを
ご覧この意識がギリギリまで捻じれ
ふつりと千切れる様
きみがきみに似せた小さな偶像の頭の中に
記号の木乃伊を切り貼りして詰め込もうとも
皮膚を裏返されたハリネズミのよう
名前からこぼれて液化した心臓を抱きしめる
愛と信仰の教義に酷似した
しなやか欲望の鎌首を扱く
向かいの屋根の烏のお辞儀 月を乗せる角度
朝顔に溺れて星を吐く黄金虫の夢
骨格に絡む蔓草
風の舌先
ことばが睦み合う
悪夢のような出来事
そんな比喩が人々の隠蔽された玩具に魔法をかけるなら
現実と双子の悪夢もまた
下着の色に気を遣うのだ
酒よりも濃い息で
ぼくらは咀嚼される
纏った時間を絵巻のように脱ぎ捨て
踊る神の幻影こそ真っ逆さま
(2024年8月4日)