サボテンとの別れ
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サボテンとの別れ
身を切られるような痛み

きみとは何万語のことばを交わし
無言で見つめあったろう
きみはわたしの髭を
わたしはきみの棘を
お互い数え飽きなかった日々が
あえなく終わろうとしている

サボテンとの別れ
焼けつく砂漠への憧れ
テンガロンハットでカーマインを彩り
風のなかで傷つき、傷つけ抱きあった
爽やかな残り香と
まだらな記憶を蘇らせた日々

サボテンとの別れ
窓辺にふたりの思索家がいると
ビルの五階で仄聞し
一棟一棟、訪ね歩いた日々
グラスの割れ目から滲みだすテキーラで
とろとろと垂らし育んできたものが
サボテン様は神さまですか
何も答えない
サボテン様は堕天使ですか
にっこり微笑む

サボテンとの別れ
サボテンとの別れ
さよならにするか
さようならにするか
あした青空に架かるはずの
虹によく似た別れ





自由詩 サボテンとの別れ Copyright soft_machine 2024-07-03 20:49:49
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