朝の月【改訂】
リリー

 百合の木の茂る蔭
 煤けた石畳で
 黄緑色した小さな毛虫に
 小型のキイロスズメバチがのしかかっている

 目に飛び込んできた
 両者のカラダの彩は暗がりから浮き上がって
 もだえる毛虫を食い尽くさんとする
 荒々しい檸檬色

 柔らかく しめっぽく私を包む木洩れ陽の
 冷たい広さの中で
 さやぐ音
 重たいはずの希望や虚しさが吹き飛ばされて
 木の頂にとまった

 空は うす青く和んで見えるのに
 ふと気付く
 この月の鋭さ

 立ち去る時、
 何とはなく握りしめるもの
 その美しいむごさ
 熱さに おののく自分のいとしさ
 




      
      (近江詩人会 「詩人通信」2024年6月号に掲載 初出を改稿)


自由詩 朝の月【改訂】 Copyright リリー 2024-06-15 21:33:44
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