紅い花
リリー
六月の寒い日が
まやかしの告白の手紙を読んだ様に
そくそくと背筋に迫る
化粧水の冷たさが掌に残り
それすら重い
黒いオルフェにとりつかれて
ピーナツをかじりながら
髪に真珠の飾りのシュシュをつけてみれば
ふと考えこませてしまう過去にも
大事なものが残り
そして 黒いオルフェが
こんなに魅惑する時、
六月の中に
悲しい欲望を忘れ咲き乱れている紅い花が
あかく あかく
歓びの日と変らぬ その色は
ほろびてしまったはずの
細き血管のたぎり
貴方の知らない微笑みが浮かぶようになった
自由詩
紅い花
Copyright
リリー
2024-06-14 22:57:45
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