初夏の釣り人
レタス
風のささやきに誘われて
釣り人は初夏の渓に分け入った
モスグリーンのいで立ちの彼は五月の若葉に溶けて
神経質な魚たちの警戒心を得ることはなかった
川面に近づくには音を立ててはいけなくて
ロッドの穂先に見えない糸の仕掛けを結んだ
餌はクリーム色のブドウ虫
魚に気付かれないように針をかくし
青い淵に振り込んだ
アタリはすぐにやってきた
ググっと引き込むように魚は宙を舞う
ランディングネットに横たわったのは
宝石のような20cmくらいの虹鱒だった
小石で脳天を叩き 絞めた
ウエストクーラーボックスに入れ
彼は餌を付け替え仕掛けを振り込む
3回繰り返すとまたアタリがきた
これはさっきの虹鱒より少し大きい
何回か仕掛けを振り込んだが反応は無かった
彼は場所を変えようと上流のポイントを目指した
沢の合流点の淵に仕掛けを振り込むと
2回目でアタリがきて
ネットに横たわらすと山女魚だった
やはり宝石のように美しい
その山女魚も虹鱒を同じくらいのサイズだった
その後かれは何匹か食べられる分の虹鱒を釣り上げ
内臓と鰓を切れるナイフで捌き
早い時間だったが帰宅することにした
途中で今夜は塩焼きかムニエルにしようかと妻に連絡した
彼はムニエルだとタルタルソースを作らなければならないので
塩焼きにすることにした
次回の釣ではムニエルにしよう
食べられるだけ釣ろうと彼は決めている