無題
ふるる

「寒い」
と君は呟く

君に街外れで告白したのは
怖かったから
君はそんなふうに
すぐ
逃げるから


「寒い」
と君は呟く

僕はその頃
埠頭で潮風の匂いを嗅いでいた
カモメの哀しい様子
君の服を思い出した


「寒い」
と君は呟く

あのレモネードの味を覚えている
まだ何も起こっていなかった
僕と君は住む場所すら違って
僕は泥の匂いが好きだった


「寒い」
と君は呟く

二人は一生一緒だと
簡単に信じてしまったのは
何故だったんだろう


「寒い」
と君は呟く

君は草原に寝そべって
僕は横に寝そべって
とても苦しかったよ


「寒い」
と君は呟く

「寒い」
と君は呟いた

「寒い」

寒がる君
そんな君には
せめて風を

寒がる君の上に風は
優しく走り

「寒い」

そんな君には
せめて僕を

寒がる君の上に僕は






とても苦しかったよ

簡単に信じてしまったのは
何故だったんだろう


自由詩 無題 Copyright ふるる 2005-05-19 17:22:09
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