「神秘体験について」
ジム・プリマス

 恐怖の集合想念の正体を掴むために、その中心に飛び込んだ後、決定的に、心身を壊して、統合失調症を発症し、精神病院に入院する羽目になったが、それ以前から世間で言うところの、霊障みたいな事象に悩ませられる時期が続いていた。その時期に何回かの神秘的な体験をした。
 ある時に車で、隣の西条市に向かって。幹線道路を車で走っているときに、人間の悪想念というか、悪霊と呼ぶべきなのか、僕の場合は、皮膚感覚で感じるだけで目には見えないので、その正体は定かではないが、そういうものに取りつかれたと思われる人間の運転する車の集団に、取り囲まれたことがあった。
 明らかな悪意をもって、車の進路を妨害され、追い立てられて、追い詰められて、彼らに追い越されるたびに、パチンというラップ音のような音がして、身体が痺れ、視界がだんだん暗くなり、身体の力が抜け、しまいには車を運転できなくなり、路肩に車を止めて、車から降りて、樹の根元に座り込んで、このままでは死んでしまうと思ったとき、天空の高い場所から何かが雷のように落ちてきた。
 それが頭のてっぺんの、ブラフマーのチャクラから、僕の身体のなかに入ってきた刹那、失っていた活力が蘇り、目の前が明るくなり、身体が元気になり、意識がとてもクリアーになった。僕が車に乗り込み、走り始めると、明らかな悪意を感じる車の集団に、また、つかまった。
 僕の身体に入ってきたそれは、とても怒っていた。僕を追い立てていた、悪想念というか、悪霊と呼ぶべきものなのか、それに向けられた凄まじい公憤だった。僕を追い立てていた者は、悪想念を宿した人間の姿をしていたが、それが実体だったのか妄想が生んだ幻なのか今でも定かではない。
 とにかくその人の姿をしている者たちの運転する車が、僕が運転する車の進路を塞いで妨害したり、車のうしろや横について、追い立て、煽ってくるのを直接、または、バックミラー越しに睨みつけると、その者たちは、一様にこちらを蔑むようにニヤニヤ笑っていたが、その表情がたちまち恐怖で凍りつき、身体を痙攣させて、蜘蛛の子を散らすように逃げ去って行ってしまった。自分の目から強い光が出ているような感じがした。
 これは後で思ったことだが、霊的なことについては素人なので定かではないが、あれは恐れ多いことではあるが、「八幡神」のお助けではなかったかと感じた。
 こんなことを語ればそれは妄想だという人がほとんどだろう。だが僕にしてみれば、その時に感じた感覚は自分の身に実感として残っている。自分が感じた感覚を、自分で否定することは出来ない。僕にとってあの経験はリアルだったと言うことしか、僕には出来ない。


散文(批評随筆小説等) 「神秘体験について」 Copyright ジム・プリマス 2024-03-31 12:42:00
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