命の行方
レタス

少年は命の秘密が知りたくて
東の岬にいる賢人を訪ねた

賢人は灯台のレンズを丁寧に磨いていた

あの… ぼくは命の秘密が知りたくて参りました

ほう 命の秘密とな…
この世のすべての現象は生々流転を繰り返し
常住することは無い
光りと闇の螺旋が空を舞うように

解りました
その先には何があるのですか

わしはこの世に光を翳すことしか知らぬ
西の賢人を訪ねるがよい


少年は砂漠を歩き賢人の住む岩窟に着いた

賢人は砂時計の砂粒を数えていた

ごめんください…
お忙しいところ申し訳ありません
東の賢人に紹介されて
命の秘密を知りたくてやって参りました

なんとな…

賢人は手を止めて少年を見た

東の賢人はこの世の全ては常住ではないと聞き
その先は貴方に聞けと仰いました

そうか…
すべては生々流転を繰り返し
光りと闇は溶けあい薄暮に溶けてゆく

それは何だかとても寂しいですね

いや、存在とは個を成すが故に孤独なものだ
独り生まれて 独り滅んでゆく
本当の寂しさは慈愛に満ちて他を見つめる存在になるのだ

賢人は砂粒を数え始めた

少年は納得した


自由詩 命の行方 Copyright レタス 2024-03-19 22:53:50
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