元殺人犯
花形新次

私は趣味で
自称詩人をやっています
と告げた場合の相手の反応を
考えると
背筋に寒気が走る
「えっ?」
にこやかだった顔が真顔に戻り
それを察知されないようにと
コーヒーに手を伸ばすだろう
コーヒーカップを戻す際は
手が震えてカタカタ音を立てるに違いない
そして引き攣った笑みを浮かべ
「そ、そうなんだ」と言った後
無言になるんだ
頭の中では
「早く此処から脱出しなければ」
と考えている
「それがこれなんだけど」と自称詩投稿サイトを
スマートフォンで見せようとでもした場合は
「いやーっ!」と叫んで
店の出口に突進して行く
そんな光景が手に取るように思い浮かぶ

それは元殺人犯であることを
告白するのと同じくらい
インパクトのあることなのだ




自由詩 元殺人犯 Copyright 花形新次 2024-03-05 20:08:05
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