夜に発光す
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夜行性の種族 夜に発光す
厚いカーテンの内側で太陽におびえる彼らのことだ
はかない食欲で栄養を摂取しながら
ただ 西の空が赤く染まるのを待っている
夜光性の種族 夜に発行される暗号文書
独りでも独りじゃないさ なぁ兄弟
星空に張りめぐらされた電子の蜘蛛の糸
ペンを持つ者 キーボードを叩く者 マウスを握る者
絵具にひたした筆はつよくしなやかに紙を往き
熱っぽい吐息でページをめくる彼女の
指には聖痕のように 黒と白と夢の染みが宿る
夜光性の種族 夜明けだよ ねんねの時間だ
彼らは名残惜しげに椅子を発って
スマホをつかんで駅前へ向かう
早朝から開く居酒屋
あたらしい空気の中で呑む寝酒の旨いこと
さくら肉の刺身を肴に梅割りをキュッと二杯
さあ 陽光で灰にされないうちにお帰り
ホコリと本と気に入りの毛布が待つ部屋へ
絶妙に散らかったあたたかな巣のもとへ
夜光性の種族 彼らにとって地球は
そう地球は まるで年がら年中クリスマスツリー
夜毎飾りつける 飾り続けてゆく
丹念に あざやかに
かき続けてゆく 灼かれながら 焦がれながら