裕二

地面の琥珀色のステンドグラスの中に
ジュラ紀の蚊が閉じこめられていてあなたに助けを求めている

クリック500回で救えますよ!
でも助けたいのはプテラノドンであなたじゃありません

蚊を潰すたびに赤い血が迸り
残酷なことをしたような気になるが
それはもともとあなたの血だった

憎い敵を殺したときに血が迸り
これも自分の血だと言い聞かせて
業というものに思いを馳せてみる

という自分を作り出して思いを馳せてみる

私が殺したのは私なのか
私を殺すことは罪なのか

人間とネット上のデータの違いはなんだろう
データ量の違いなのか
実体があるないということなのか
実体とはなんだろうか

架空のアドレスで
架空の存在を作る
この架空の私は
潰しても血は出ない

ジュラ紀の蚊の中には
映画みたいにプテラノドンのデータが入っていて
これを潰すことは
プテラノドンに食べられてユリカモメが絶滅の危機に瀕するとか
そういう可能性をも潰すことだ
だからジュラ紀の蚊は潰してはいけない

けれどもあなたの血を吸って腹がぷっくり膨らんでいる蚊は
潰しても倫理的に問題ない
その中にはあなたのデータが入っているだけだから


自由詩Copyright 裕二 2005-05-18 04:07:25
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