罪も罰もない
日々野いずる

胸が死ねという
詞を使って人を弄する
これ迄の軌跡がない轍
目が悪くなったんだ
詞を使って救いを求める
光が差す空の朝陽で
何も見えないと言い訳をする
染みるだけ染みた寒風が
表面をさらって涙となる
木の葉が惑う
自分の足がきちんと生えている
足跡がない
沼地に立つ
ここら一帯がずっと昔に
大きな池だったのを知っているか
サギが立つ水面が
円形の波紋を伝える
鳥は飛べる
一投が
石の一投が
何処にも波を生まないことが
不幸で
幸福で
誰にも影響を与えず
何を言っても許されて
何を言っても何をしても何処にいても
諦めが悪いとの自嘲も
他人にとっての自慢になる
長所で短所が
身を切っていく
無くなったとてきっと
なにも産まず与えない
風にさらわれることが
幸福であるように
自力で飛べたらどんなに良い
サギが飛ぶ
波紋を残す
去っていく
足を泥が浸していく

憂鬱の観念が煩悩として独自だと
投石した功績は罪業と等しいと



沈むだけの重力がかからない
不安定な浮遊感は

罪も罰もない


自由詩 罪も罰もない Copyright 日々野いずる 2024-02-16 19:01:06
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