二重線
トビラ

雨が降る、十二時の長針の上
赤い流星と黄色の音符
ふたつの意思が結婚式を挙げる
白い祝日は
透き通る幽霊たちの歌で始まる

今日はウツボカズラの休日
塞がっていた穴の開く朝
べこべこな薬缶に花が供えられ
きれいな声がよく町に響く

マリンブルーの色をしたサイダーは
グラスの中で航海を待つように
花嫁の喉を通るまで
金星を溶かしている
砂糖菓子では満たない温度で

この時に火を点ける
今日この日を燃やす
埋没した昨日を炙りだす
燃えろよ

ぽとぽと落ちる水面
うさぎは月を見つめる
約束は二つあった
届いた手紙は一通だった
川には飛びこまなかったけど
白い泡になった
蛙は白い泡を潰した
一つ潰すごとに歌が生まれた
蛙は「バカヤロウ」と叫び干からびた

歌は岩に宿り
小石は歌うようになる
小石の歌は朝露をゆらし
墓についた水滴は
午前六時の短針に落ちる

おやおや船が出港するよ


自由詩 二重線 Copyright トビラ 2024-02-07 08:20:41
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