ぽりせつ

冬の明け方は
町のいたるところに魚の群れが現れる

もっともよく見かけるのはニンゲン魚で
その横をついてまわるイヌ魚
校舎をよこぎるネコ魚やセキレイ魚がいれば
そのまま森へと消えるカモシカ魚もまれにいる

まだ町の目覚めきらない
空気のほんの透明なあいだだけ
群れは姿を現す

古い手紙をよむひとが
いつもどこかにいるような
そんな小径を
魚たちも知っていて

待雪草の咲くころ
彼らは姿を見せなくなるが
絶えたわけではない
陽とともに川へ流れこみ やがて海にたどり着く
そこであたらしい青い眼をさずかるのだ

群れはつづく
たとえ海のてのひらから 空のてのひらへ
手渡されていく時がきても
彼らは彼らの明け方を
ただ待っていればいいことを知っている

先頭も 最後尾もないいのちの順列がある
彼らを追って歩いてきたわたしの後ろに
魚たちがつづいている


自由詩Copyright ぽりせつ 2024-02-02 14:23:40
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