岡部淳太郎

陽の光がまたたくせわしない時
誰もがどこかに向かって急いでいるが
なぜ急いでいるのか
その本質の答にたどりつく者はなく
ただそうであるからという
日常のために急いでいる
気の重くなるような義務と
預かった覚えのない責任
それらのために ゆっくりと
だが確実に気がふれてゆきながら
それでも この朝の爽やかさを呼吸する
そして噎せる
肉体の喉ではなく
魂が噎せてしまう
かたちにならなかった言葉が
舌の上で転がり始め
まだ残る昨日の夜の暗さと
これから確実に来るだろう
今日の新たな夜の芽を思い
文明以前の太古の朝も
このようなどうしようもなさを含んでいたのだろうかと思う
そして こんな朝を繰り返しながら
徐々に滅びてゆく人の未来を 幻のように見据える



(二〇二三年十月)


自由詩Copyright 岡部淳太郎 2024-01-14 17:24:51
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