思い出のがっちゃき一
板谷みきょう

「そりゃ、がっちゃきだべさ。」
久し振りに電話を掛けて
話のはずみで
排便の度に出血すると話したら
母親が言った

「ほっといても治んないんだから
ちゃあんと病院さ行け。
ほんで、診て貰えよ。
高橋のおじさんみたいになんか
なったって知らんからね。」
きつい口調で母親が言う

高橋のおばさんは親父の姉で
おじさんは長年鉱夫で働いてた
大酒飲みで
時々、大小便をもぐしてた

モッコフンドシでいるのは
痔を放置し過ぎて
石山肛門科に行った時には
肛門の筋肉をぐりっと手術で
取ってしまう位に
手遅れだったかららしい

布を当てていないと
大便が自然に出てしまうそうだ

だから親族が集まる正月には
高橋のおじさんは
いつも早々と帰って行ってしまう

それを思い出して
暫くしてボクは
白石区の肛門科に行った

手術を勧められたが
入院するだけの休暇を取れず
切開して貰って
強力ポステリザン軟膏を
処方して貰ってきたのだった


自由詩 思い出のがっちゃき一 Copyright 板谷みきょう 2024-01-08 15:02:44
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