コールドスリープダウジング
ただのみきや

汗も涙も塩辛い
胆汁は苦い
寒さに震えるネズミ
呼吸を忘れたネズミ

肉体と精神の糸のほつれ
つぶれたトマト
窓から飛び出した冷蔵庫
氷嚢をあたためる心臓

入れ子状の死
ゴミ箱が奏でる音楽
爆破された子宮
記号 美しいオーケストラの手足

財布の中の蝶
血のついた岩塩
包帯だけで中身のないミイラ
未来のミイラ

ロマンスわたしたちの
模索される予定調和
その手前に置かれた一通の紙の神殿
沈黙を咥えた犬の目

曲がりながら近づいて来る
金属の風
神々と動物の隙間だらけの肺
発火する眠り

痛みの開花
やわらかい鐘の音をこぼさないように
つま先から凍ってゆく
長い死のいくつも並べた枕詞

角砂糖の上で溶ける舌
空飛ぶ沼が鼻先をかすめる朝
下着には違和
瞳には落花生


                    (2024年1月6日)








自由詩 コールドスリープダウジング Copyright ただのみきや 2024-01-06 16:49:54
notebook Home 戻る  過去 未来