夕景
レタス

月の昇らぬ砂浜に
唐紅からくれないの空眺め
忘れた歌を想い出す

衣を染めた白鳥しらとり
うつろな波に身をまかせ
かえ棲家すみかを識らぬよう

ほつれた髪は風に散り
きしむ素足は地に呑まれ
潮にこうべをさらしゆく

もがりの笛は漂々ひょうひょう
沖ゆく小舟独り待ち
寄せ来る波にたま洗う






注1)もがりの笛=虎落笛もがりぶえ。冬の季語 風が強く柵に当たりひゅうひゅうと鳴るありさま
注2)もがり 古代に行われた葬送儀礼。腐食し白骨化するまで死を受け入れる儀式をいう

ふくし、喪から開けたこと 喪あがりが語源なのかもしれません
 


自由詩 夕景 Copyright レタス 2024-01-06 14:34:06
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