同級生
リリー

 木下闇
 人の通わぬ奥深く
 その道 樹々の嘆くとも
 君、
 振り返ること無くて

 遺影の彼は
 今も 三十二歳

 その朝、枕辺のオーディオステレオが
 静かに鳴っていたらしい
 起きて来ない息子の部屋を
 覗いた母親の目に
 掛け布団が半身捲れた状態のまま
 寝入る彼は
 目覚めなかった

 四十九日の法要も過ぎて
 彼に届いた
 好きな歌手のコンサートチケット
 それを聞いた時、
 ふと瞼 閉じる涙
 彼は自分の死を知らないままなのだろうか…
 突然死という 観念の悲しさ

 死神が何故
 一軒隣に住まう彼を選んだのか

 すっかりシミと白髪で鏡と睨めっこする朝を
 迎えるようになった私は
 今でも 遺影の彼の笑顔に
 それを思うのだ


 
 
 

 
 
 
 

 
 
 
 


自由詩 同級生 Copyright リリー 2024-01-02 17:11:08
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