青空とレモネード③
朧月夜
*曇り空1
こうして僕は晴れて君と知人同士の関係になったわけだが、友人関係になったという感情はどうしても湧いてこなかった。実際、君にとって僕は「お客さん」の一人でしかなかったろう。「絵を買ってくれること」が最終目的だったわけだ。僕といっしょに何かをしていこう、という気持ちは君にはなかったに違いない。
そして、言っては良くないのかもしれないが、君には女子力というものが欠けていた。容姿は人並みで、それほど悪いというわけではない。しかし、君の存在はなんと言うか透明すぎるのだ。透明すぎて、人間として接することが出来ない。そんな不確定な雰囲気が君にはあった。これは、他の男であっても同じことを思っただろう……
君と僕との家は近い。平瀬川の河原に行けば、時折は君に会えるだろう。そのことは分かっていた。ただ、仕事の予定を開けてわざわざ河原へ出向く、ということを僕はしなかった。僕の家へは「安宅橋駅」を利用するのが近道なのだが、そこから家へは河原沿いの道を使う方法も、別の方法もあった。
僕はわざとのように、河原伝いの道を避けていた。「君に会いたくない」というわけではない。しかし、君だけが持っている、君だけの世界というのを邪魔したくなかった。季節は初夏で、一面に晴れ渡る日が続いていた。君はやはりスカートの上に直接キャンバスを乗せて、自分の服を汚しながら絵を描いていたことだろう……。そして、時折はイーゼルを斜面に立てかけて。
その日、僕の気持ちが河原へと向かったのはなぜだったろう。あるいは、その日は珍しく曇り空の日だったからかもしれない。平瀬川の河原に行っても君はいないだろう、という予感が僕はしていた。そうすれば、君だけの世界を邪魔することもない。そして、僕は僕自身の世界に浸っていられる……。
しかし、僕の予想は当たらなかった。君がそこにいて、いつも通りに絵を描いていたからだ。そして僕が声をかける前に、君のほうから僕の姿に気づいたようだった。10数メートル離れた場所から、僕に手を振ってみせる。それはやはり、「知人」に対する手の振り方だった。
「あなたがいつお客さんになってくれるか、楽しみなの」
絵筆を止めて、君が言った。
「僕はお客さんにはなれないよ。君の絵を買うお金がないもの」
僕は残念そうに答えた。
「ただ見に来てくれれば良いのよ。今度個展を開くっていったでしょう。個展は一週間続くの。その間に、空いた日があったら見に来て」
「どうかなあ、僕はけっこう忙しいから」
「朝から夕方までやってるんだよ。だいたい10時から、17時くらいまで。少しの時間は作れるでしょう?
「そういうわけにも行かないんだ。夜勤明けにまた夜勤が待っていることもあるし、一日中仕事をしていることもある」
「そう。残念だな。でも、個展を開くのは今回だけじゃないから。家に絵を見に来てくれても良いし……」
「それは無防備すぎるんじゃないかな?」
「無防備? ああ、そういう心配? 安心して。わたし、合気道初段だから」
見かけによらず、そういう特技もあるのか、と僕は思った。合気道初段なら、「その手の」心配をする必要もないだろう。君の部屋にはコンクリート・ブロックという「凶器」もある。それに、君は他人に対して隙を見せるようなタイプには思えなかった。それも、他人を遠ざけてしまう原因の一つだろう。
「今日は雲の絵を描いているの?」と、僕が聞く。
「そう」
君のキャンバスには、一面にグレーの絵の具が塗られていた。しかし、それはたしかに空に見える。命を持って、生きている空に。単純にグレーと言っても、そこには様々な魂が宿っている。薄いグレー。濃いグレー。わざと白い色にしている部分もあった。それは君が目の前に見ている景色そのものでもあり、それを超えたものでもある。
*曇り空2
「雲って言っても色々あってね。入道雲、乳房雲、積雲、層雲。スーパーセルなんていうのもある。スーパーセルって知っている? 台風の小さいみたいなやつで、ものすごいの。一度それを描いて絵にしたら、高く売れたわ。今度インターネットか何かで調べてみて」
空を描く画家だけあって、君は雲の種類にも詳しいようだった。僕はよくは分からないがなんとなく納得出来るといった調子で、君の話す言葉を聞いていた。いつか、君が雲の専門家ではないと言ったことを、僕はひそかに後悔している。
「わたしの話、聞いている?」
と、君が尋ねる。
「聞いていますよ」
わざと他人行儀な口調で、僕は答えた。
(この子と恋愛関係になることは、やはりないのだろう)
と、僕は考えていた。それよりもまず、友人というものになれそうもない。僕と君とでは、根本的に生きる世界が違っていた。同じものを見ていても、僕と君の心に入ってくるものはそれぞれ違う。僕の心に入ってくるのは単なる視覚情報であり、君の心に入ってくるのはそれ以上のもの、あるいは、その内奥にあるものだった。
「君は花を描くことは止めてしまったの?」
僕は、僕が初めて君に出会った時に提示したアイディアについて、たしかめるように聞いてみた。
「花? ああ、青空の絵を描く時には、花を描くこともあるよ。1本だけね。でも、今日の絵には合わないから……」
君の絵には、やはりキャンバスの下の部分に余白がある。曇り空を描いているだけに、それは余計に際立っていた。
「もう色んな絵がそろったわ。朝焼けの絵、夕焼けの絵、青空の絵、曇り空の絵、夜空の絵、虹の絵……。わたし、本当はこういう絵を描いていくつもりではなかったんだけれど……」
「じゃあ、最初は何を描こうと思っていたの?」
「抽象画。わたしのルームメイトも、最初は抽象画を描いてた」
「それはどうして?」
「抽象画は学校の先生に受けるからね。それで2人ともおんなじことをしていたの。素直っていうか、馬鹿みたいでしょう?」
「そうでもないけれど」
「でもね、個展を開いているうちに、売れる絵っていうのはそういうんじゃないんだって、気づいたの。何か人に安心感を与えるような絵、画家を信頼することが出来るような絵、そういうのが今は売れるんだ。だから、わたしは空の絵を描いている。空って、どこにでもあるものでしょう。でも、家の中にはない。要するに、わたしの絵は窓の代わりっていうわけね。あるいは……なんだろう」
「記憶? 思い出?」
僕は思いついたままに口にしてみた。
「そうね。そう。きっと『原風景』よ。いつかどこかで見たことがあるような。そんな記憶の中の景色」
「君は素晴らしい画家だと思うよ」
「ありがとう」
僕は心からの言葉を口にしていたし、君の感謝の言葉も率直なものだった。「それだけに淋しい……」とも僕は思う。
こうした会話を、実は君は何人とない人たちと交わしてきたのではないか、と僕には思えた。現実問題として、その通りだろう。戸外で絵を描いていれば、それに興味を示す人というのは必ずいる。とくに老人たちなどは、世間話もかねて彼女に声をかけることがあったろう。そうして、今と同じようなやりとりを繰り返してきたに違いない。
「あなたは今日は徹夜明け?」
と、今度は君のほうから僕のことを尋ねてきた。
「そうだよ。一番街のほうで店の飾りつけがあった。僕は現場監督を任されていてね……図面とのにらめっこさ」
「あなたの仕事も大変そうね」
「いや、そうでもないんだけれど……応援で来た子たちに指示を出すのが難しい。なかなか分かってもらえなくってね」
「あなたは正社員なの?」
「今はアルバイトだけれど、夏には正社員になることになってる」
「そう。それはおめでとう」
祝福されて喜んで良いのかどうか、僕は迷った。仕事は今よりもキツくなるだろう。正社員に昇進すると言っても、それは名ばかりだ。現に今でも正社員とほぼ同じだけの仕事をこなしている。報酬はわずかに上がるだけだろう。有頂天になっているわけにも行かなかった。
ただ、「ありがとう」と、僕は社交辞令で答えた。
*曇り空3
もし僕が君に恋愛感情を持っていたら、そのころから君は変わり始めていた、ということに気づいても良かっただろう。それは劇的な変化ではない。見かけからは些細な変化に過ぎなかった。しかし、君はその心の奥底の部分で変わり始めていた。それがなぜなのか、今の僕には分かる。しかし、今は言わないでおこう……。
「君の個展はいつからだったっけ?」
話題に困った僕は、なにげないことを尋ねてみる。
「1カ月後の火曜日から、日曜日までだよ。月曜日は画廊は休みだから」
「月曜日は休み、ね」
僕は皮肉っぽく、そんな答え方をした。そして、自分の仕事にはほとんど休みがないことを思った。休日が用意されていないわけではない。ただし、僕の仕事場では24時間を待たずに次の仕事が始まることも多い。休みと言えば、ほとんど自宅で寝ていた。画廊の休日というのは、果たしてどんなものなのだろう……。
「君は時々は休んだりしているんだろう?」
「まさか。画家に休みなんてないよ」
僕は驚いた。芸術家と言えば優雅な生活をしている、と誰もが思う。自分が好きな時間に仕事をし、自分が好きな時間に休むことが出来る、と。しかし、実際にはそうではないらしい。画業に徹していない時でも、その下準備、個展の開催の準備、健康管理のための運動など、しなくてはいけないことは山ほどあった。
合気道が初段だと言ったように、君の生活は外から見た様子に比べて、思いの他ハードなのだった。自分の感受性を総動員するということも、端からは考えられないほど、体力と気力を消耗するものなのだろう。若い画家であればなおさらのことだ。それまでの経験と知識の蓄積で、作品を作るということが出来ない。
「駆け出しの画家っていうのは大変なんだな」
「軌道に乗るまではね。お客さんが何を求めているのかも分からないし。でも、今では少し落ち着いている」
なぜか安堵しているように、君は答えた。その安堵が不安の裏返しだということにも、僕は気づいてあげていられれば良かった。安心感というものは、いつだって何かと引き換えにしなければ得られないものなのだ。君は何かを失った結果、何かを得ることになった。それが今の安堵感だった。
「君と僕とが喧嘩したら、どっちが勝つだろうか?」
「それはもちろん、あなたがよ」
「それもそうかな……」
たしかに、合気道初段の女性と、肉体労働の男性とでは、肉体労働の男性のほうが力が強いだろう。しかし、内面のハードさにおいては、君のほうが勝っているかもしれなかった。僕は君を組み伏せることは出来ても、君は決してそれに屈することはないだろう。僕にはなんとなくそのように思えた。
「もし時間が作れたら、君の絵を見に行くよ」
「ありがとう」
僕がそんな風に約束をしたのは、そこには僕の仕事に対する何らかのヒントも隠されているように思えたからだ。決して、君に対する友情から出た言葉ではなかった。「僕はこの子を信頼していないのだろうか」と、僕は心の中で迷う。
あるいは、僕にとっても君は「お客さん」なのかもしれなかった。君が自分のスペースを持つようになれば、僕はその場のデザインを手がけることになるかもしれない。そんなことも、決してないとは言い切れないような気がした。
僕が、君の精神の世界にまで踏み込んで君を見ていなかったことは、今から思えば残酷なことだったと思う。そのことを僕は悔いているわけではない。ただ、もう少し違った出会いであったら、と思う。もし僕自身も画家だったら? そんなことはあり得なかったが、僕は君に対してある種の同胞意識、仲間意識のようなものを感じていた。
それは、君が僕にとってのライバルであるということも意味していた。それが、僕の感情が友情や恋愛感情に至らなかった秘密の答えだ。僕はただ君を観察していた。それこそ、画家の描いた絵を見つめるように……
*曇り空4
僕はその時、数店の店舗のレイアウトを任されていた。しかし、そこでトラブルが起こった。あるお店の壁にかけるはずだった飾り棚が届かないというのだ。確認してみると、製造元の会社が倒産して、破産手続きを始めたということだった。僕はその後処理に追われることになった。
お店のレイアウトというのは、単純そうに見えて案外繊細なものだ。店の飾りつけ一つによって、客の購買意欲は微妙に変化する。商品を手に取って買いたい、と思わせるレイアウトを設計することは難しい。その部品一つが外れても、客足は遠のいてしまうのだ。お店というのは、商品と同時に夢を売る空間でもある。
クライアントとなるお店と、会社の間を僕は何往復もすることになった。「だからスマホを買っておけって言っただろう」と、社長が怒鳴る。スマートフォンを持っていればどうにかなる、というわけではなかったが、僕は「済みません」と謝った。
結局、お店の西側には丈の高いラックを、東側にはショーケースを配置することで落ち着いた。壁の空いている部分には、ポプリやフラワーポットを吊り下げることで、なんとか店内の様子を落ち着かせることが出来た。中央にあるテーブルは、やや西側に寄せた。これで客の動線は変わってしまう。それは仕方がなかった。
君のルームメイトから電話がかかってきたのは、そんな折だった。それまでに、僕は君と数回会って話をしていた。僕はそれどころではなかったが、彼女の声は真摯だった。彼女は君との同居を止めると言う。僕は返答に窮した。
「いきなりなぜそんなことを僕に?」
「あの子があなたと同居したがっているの。ルームメイトとして……」
「なぜ?」
僕はただただ驚いた。何よりも、僕と君とは知り合ってまだ間もない。友人でも恋人でもない間柄だ。それがいきなり同居人になるということは考えられなかった。もちろん、僕は丁重に断りを入れる。
「それは出来ません。それに今、仕事が詰んでいて、それどころじゃないんです」
「そう。残念だな。あの子はけっこう期待していたんだけれど……」
(期待?)――僕には君の気持ちが分からなかった。知り合って間もない人間と同居する。それも、画家仲間であったら理解出来る余地もあっただろう。しかし、僕と君とでは職種も違う、立場も違う、そして、生活のスタイルも生活のリズムも。そんな君がなぜ僕を求めるのだろうか……
「それより、なぜあなたは彼女との同居を解消することにしたんですか?」
僕はビジネスライクな口調で尋ねた。彼女からの返答はなかなか得られなかった。
「実はね……」
と、君のルームメイトは切り出す。君のルームメイトは女性が好きだった。そして、君は彼女の恋愛対象ではなかった。君のルームメイトは、彼女が好きな女性といっしょに住むのだと言う。すでに引っ越しの手配もしてあるし、君にもそのことは通知済みだということだった。
「それで、彼女はなんて言ったんです?」
「『うん、分かったわ』って」
「それは、言うでしょう。単なる同居人なんだから、あなたを引き留める権利はない。だからって……」
「それに、もう1つ理由があるの」
君のルームメイトによると、最近の君はどこかおかしい、ということだった。端から見て変な行動を起こすわけでもない。言動は今までのままだ。しかし、なぜか内面が変化してしまっているように感じられる。そのことは彼女の絵にも現れている、ということだった。
「それは、彼女が成長しているっていうことじゃないんですか? 画家として」
「それもあるかもしれないけれど、変なの」
「変なの、じゃ分からないですよ。あなたの気持ちはどうなんです?」
「もう、彼女との同居は続けられない」
にべもない答えだった。しかし、その裏にある事情があったことを、僕はまだ知らなかった。君は君のルームメイトに恋をしていたのだ。女性らしい、同性にたいする憧れ、と言ってしまえばそれまでだろう。しかし、君は確実に女性の同居人を求めていた。それが僕との同居を望むという……何にしても不可解だった。
*曇り空5
「僕にも、ちゃんと自分の家があるんですよ? たとえ一緒に住むとしたって、その解約期間や引っ越しの準備というのもある。あまりにも勝手すぎませんか?」
クライアントと話をする時の口調で、僕は君のルームメイトに抗議をしていた。こういう時、僕は自分が冷たい人種だと思い、芸術家というのがそれとは真逆の温かな感受性を持っていることを強く感じる。ビジネスライクな雰囲気は、君のルームメイトにもあった。もしくは、彼女が君が道を踏み外さないための重石になっているのかもしれなかった。
「彼女から直接話があれば、考えます。でも、僕から言うことは何もありませんよ」
「そう。ただ、個展には見に来てほしいって言ってたわ」
「行ければ、行きます」――あいかわらず自分の言葉は冷たい。そこには少なからず、君への反感も混じっていただろう。画家として成功しつつある君への嫉妬。それを醜い、とは僕は考えなかった。僕と君とはライバルのようなものだ。どちらが先に成功するか。どちらが足を踏ん張って生きていくことが出来るか。そんなことを考えさせるような力が、君にはあった。
ビジネス上の問題に加えて、私的な問題に捕らわれることを、僕は嫌った。今の自分にそんな余裕はない、と思った。しかし、僕は僕自身の気持ちには気づいていなかった。心のどこかでは、「君の同居人になっても良い」と考えていたのだ。そうでなければ、その後の僕の行動への説明がつかない……
そんな折、僕は地域メディアの冊子に載っている君の記事を目にした。というのは、僕が開店を手伝った店の広告記事がその冊子に載っていたからだ。つまり、それは偶然、それはたまたまというわけだっだ。そこには、こんなタイトルの記事が書かれていた。
『青空と雲が映し出すもの 余白が示す絵のカタチ』
そこには、「正装」姿の君の写真もあった。僕が以前見かけた、黒いワンピース姿の君の写真だ。そして、その記事の中で君はインタビュアーからのインタビューに答えていた。
「芸術論」とは言わないまでも、君が何を言おうとしているのか、僕には半分も理解出来なかった。きっと、絵の愛好家であれば何かしら思うところもあるのだろう。
その冊子を、僕は鞄の中にしまった。きちんと家に持っていくつもりだった。
急転直下の出来事があったのは、その直後だ。君のルームメイト、いや、元ルームメイトから再び電話がかかってきた。
「あの子が事故にあったの!」
涙声で君の元ルームメイトは言った。
「なんですって?」
驚いて僕も答える。君の個展は3日後に迫っていた。つまり、それは5月中旬の土曜日のことだった。
「なぜ、あなたが知っているんです? そういう連絡って、普通家族に行くものでしょう? 彼女からあなたに直接連絡が来たんですか?」
「違うの。あの子の携帯電話の連絡帳にあったのが、わたしとあなたの番号だけだったらしいの」
「それで、今彼女は外科に?」
「入院しているのはたしかだけれど、精神病院になの……」
君が載っていた冊子の写真。それを見た時にも、僕はどこかがおかしいと気付くべきだった。事故は大したことはなかったらしい。それは分かっていた。しかし、なぜ外科病棟ではなく精神科病棟に入っているのだろうか。何かがおかしい、何もかもが。
「それで、あなたは彼女に会いに行ったんですか?」
「いいえ、面会謝絶ですって。家族しか会えないらしくって」
「それで、家族はどうしているんです?」
「家族とはまだ連絡がついていないらしいの。彼女、記憶障害になっているんだって」
状況がうまく飲み込めなかった。君は精神科病棟に入院していて、記憶障害になっている。そして、家族とはまだ連絡が付いていない。病院側が分かっているのは、僕と君の元ルームメイトの連絡先だけ。それよりも何よりも、どんな状況で彼女が事故に巻き込まれたのか、それが気がかりだった。本気で他人のことを心配する、というのはこういうことなのだろう。