sayonara.com 61-70
AB(なかほど)
僕らの明日はどっかにつながってるんだ
さよならなんて言うもんか って
鳴きつづけてぱたりと絵本が倒れるように
さよならとくじらが言った(ように見えた)
さよならと機関車も答えた(ように聞こえた)
僕はどちらにも行けるような気がした
あ っと
君の声が聞こえたような気がした
それだけで泣いてしまいそうだった
子供達が窓に額を押し付けることもなくなり
そうしているうちに
昼でも夜でも消えていくものがある
Yさんの口癖を久しぶりに聞いた
嬉しくなるはずなのに昨日はなんだか
寂しくなって帰りはとても早足になった
消えそうな声に消えそうな笑顔に
消えそうな全てのもに
耳を澄ませファイヤーバード
誰ともなく唄い始めたのは
誰かを忘れないためかもしれない
誰かを忘れるためかもしれない
思い出を右から左に並べて行く
君が泣けないうちに
先にくずれてたのは僕のほう
ときどき縁側の端からこうして
君の こえ を
庭先にこぼしてしまう
ふりかえるとあたり一面にシャガの花
思い出すひとがいるから咲くのだろう
もう一度ふりかえると祖父の家
明日から空家となる