年の瀬
夏井椋也


終えて
始めることを
止めた

当り前に
巡ることを
諦めた

透き通った人達の
声が届かないように
ひたすら囀った

正しすぎる風に
猫背を向けて
なけなしの炎を護ろうとした

消え入りそうな道の先から
また せせらぎの音が聞こえる
終えて始めるための音だ

もはや向こう岸に道はない
それでも

裁かれない罪をしっかり抱えて
時の浅瀬を渡って往く

足元の小さな花を摘んで
暮らしの窓辺に飾り続ける

もう道は探さない
辿り着く場所は解っているから



自由詩 年の瀬 Copyright 夏井椋也 2023-12-16 07:41:11
notebook Home 戻る