幻DIE死
大覚アキラ

世界を終わらせる旋律を歌う鳥が
つみびとたちの屍の山をこえていく
その日の朝
わたしたちは一様に不幸である
朽ち果てた限界集落の
かつてバス停であった場所で
ほら
あれをごらんなさい
スプリング・ハズ・カム
捨てられないままの名前が
わたしたちのなかで灰になると
わたしたちはますます屍になって
その名前を呼ぶ人はもはや
どこにもいないと知りながら
人生という名の椅子に腰掛けたまま
腐りかけた眼玉を鳥に啄まれて
わたしたちはフルートのように鳴く
ひずんだ宇宙に
閃輝暗点が永遠にきらきらと瞬き
これまでに死んだすべての命が
寸分のずれもなく同時に目を瞑る
恋人の名前はもう思い出せない
約束の場所に続く橋は落ちた
どれだけ待ってもバスは来ない
春が
春が来たね
スプリング・ハズ・カム



(初出:日本WEB詩人会 2023.10.15)


自由詩 幻DIE死 Copyright 大覚アキラ 2023-12-15 13:15:12
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