ねなぎ

だれかがゆってたんだけど
かわのむこうには
いけないんだって

ああ
それはイケナイ

川の近くには
セイタカアワダチソウが茂っていて
いつものパルプの臭いがして

高架橋の下は
トラックでいっぱいで

ふと気がつくと
終着駅となっていた

ここから先には
どこにもイケナイ

地下鉄に乗っていたはずなのに
地上に引っ張り出されて
湿った感情は
宵闇に曝されたまま

結って咥える
誰が

あのベンチで休んでいったら良い
団地の上に行ったら
向こう岸が見えちゃって
イケナイよ

そんな事誰が言うの

多分
見えてたんだろう

目が合った
あのジャージの親父にも
本しか見えていない中学生にも

川の向こうには
大きな工場が乱立しており
そこから
垂れ流される排水の臭いと
金に群がって
虫が大量に発生して
赤い色の
川面から
緑に滑る
底が見えない

誰かが言ってたんだけど
川の向こうには
行けないんだって

ああ
それは行けない


自由詩Copyright ねなぎ 2023-12-02 09:24:04
notebook Home 戻る