青い森のおはなし
印あかり

僕の正体は朝ぼらけの青い森
鳥たちの目覚めは
僕が態々うながさなくたって早い

やあ、おはよう
僕は君たちの住みかで、お墓さ

霧は粘膜
僕はねぶられて、びっちょりになる
空はすっかり裸で、月はその胸元を飾る真珠
ああ 夢のようだ
僕は空と愛しあっている

僕、
無数の動物や人の骨を飲み込んできたんだ
自分じゃもうわからないけど、きっと臭くて
もう昔みたいに聖なるものは寄り付かなくて
カスみたいな虫の飛び回るこんな僕の体を
抱きしめてくれるんだね

葉っぱの擦れるのを抑えられなくて
こんなんじゃ嫌われちゃう、
小鳥たちも見ているし
丁度、僕の一番嫌いなアイツも
揚々と目を覚まし、うるさく光りはじめた

みんな目を細めて、彼を見ているけど
僕は知っている
彼が、毎朝毎晩、誰にもバレない隅っこで
こうして彼女を抱くのを

赤く染まっていく彼女を見ながら
僕は、葉っぱを揺するのをやめられない
いつか彼女を彼から救うのだ
でも僕の、
濡れて冷えた体は、また火照っていく



自由詩 青い森のおはなし Copyright 印あかり 2023-11-29 21:45:21
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