春 ~Judy Garlandに
カワグチタケシ

Museum of Broken Relationships
星のきまっている者はふりむかぬ

私がニューヨークへ
映画のプロモーションに行くと
朝5時半から行列ができた
8時の開場までに15000人が集まった
映画館に入れなかった人々が
他の映画館を埋め尽くした

真実はいつも小さな声で語られる
雨の朝 恋人の車で自宅に送り届けられる
ハザードランプの赤
私は虹を歌う
けれども
嵐の前の南の空の点滅
それが私

私は間違えたかっただけなのに
ちゃんと間違えることを大人は私に求めた

私の名前はフランシス・ガム
犬を大切にした
太い足首 反っ歯 田舎者
ゲイの父親
ステージママの母親

私は心から歌う
心はここにある

私は人間だ
およそ人間に関わることで
私に無縁なことはひとつもない

私はみんなの親友
アメリカの恋人
誰の約束も破らない
誰も裏切らない

あなたが受け取った処方箋に書かれた
苦い錠剤が私に夢を見させる
現実は夢になる
夢と現実の境目を私は歌う
その歌で私は夢見心地になる

夢の続きを追いかける
果実は星座にならないが
過去の光が未来に届いたりする
あなたと手をつないで
つないでいないほうの手が
地図を指差す

雨はひどくなるでしょう
深夜から未明にかけて
強い風をともなう
激しい雨が降るでしょう
朝には虹が
蜘蛛の巣には水滴が
ステンドグラスのように
輝くでしょう


Contains samples from N.Ayukawa & P.Terentius

 


自由詩 春 ~Judy Garlandに Copyright カワグチタケシ 2023-11-26 23:49:09
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