越境
凍湖(とおこ)

なにになるのかわからぬまま
船を漕ぎださなければならない

河岸を変え
肉に刃を入れ
針を刺し
名をあらため
これまでの日誌は燃やした

空は暗く北極星もない
羅針盤はくるくる回り
海図を見てもあてにはならぬ

それでもゆかなくては
なにになるのかわからぬまま
漕ぎ出す船は戻れない
たとえ幽霊船になっても
炉にひかりを抱いて
船はゆく


自由詩 越境 Copyright 凍湖(とおこ) 2023-11-03 18:23:11
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