メモ
はるな


単三電池のなかにとじこめられる感じ。思考がとめどなく溢れ出て体中を巡っている血みたいに、指先まで。とても速くて疲れるから、ゆっくりしか動けない。息をするとき、それは鉛、足元をつぶしていく。でも、たぶん、わからない。とてもさびしい湯気のなかにいる。熱いはずなのに、掴めず、あっという間に冷めていく。でもどこもかしこもぼんやりさびしくて、動けない。私の皮膚が、ビニールの壁紙みたいに硬い。破けそうに伸びてべたついている。画鋲、画鋲と針を探すふりをして、本当は空気が抜けない感じ。猫とかが通り過ぎていく、見向きもしない。メモ、いくつもの喜びを見逃して、渇いている。街は時間を擦り潰していく
メモ。青い髪をして、ではなく、自分の思うような見た目でいること。自分の想像したときの私がそこにいると良いと思う。良い匂いと清潔なシャツ、柔らかい靴と、小さな鞄、それから、いまは、それだけ。かんたんな外側を用意して、かんたんに着脱する。メモ、
結局のところ(結局のところ!)もともとのものを認識することは難しい、絵の具が宙にとどまれないのとすこし似て(絵の具はそのものでもあるから)いる。どこにもないようにあるものを、私と呼ぼうかな?
あの、さびしさが湯気であるならば、それはわたしではないのだな。と至るに、こんな感情をして、泣いたり、茫然としたりして疲れて、設定の狂ったピンボールのように跳ね続ける、とめどない思考の粒を、画鋲、画鋲、メモをとめるための画鋲です。


散文(批評随筆小説等) メモ Copyright はるな 2023-10-06 23:01:22
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