アーキテクチャ
由比良 倖

あちこちに報知器が置かれていて、
街では大きな物語が流れている。

私はここにいないのに、
死体は道路に転がっていて、
それを避けて歩く限り私は存在しないと、
標識に書かれていて、
私はメモリスティックを口に咥えて
誰も読まないライトノベルを運んでいるみたいだ、

(つまり、私は存在しない、)

死体の、無駄使いですよそんなのは、
つまり踵は、ヒールは、
死体を避けて渡る為に発達したもので、

紛い物に対するハイテンションみたいに、
発達した空気を肺腑に含みつつ、
はい、青い方どうぞ、って、
底知れない聖堂みたいな中を連れ出されていって、
眩しすぎて、もはや星みたいな歌しか出ないのに、
浮く、

もはや街ではイアン・カーティスしか歌っていない、
迷いが背中に付いてくる、
もはや優しさは適用されない、
社会科の見学みたいだ、
目を瞑るとただのキャッシュみたいだ、
路は続いていて、
月は照らない、
私は何処にもいない。


自由詩 アーキテクチャ Copyright 由比良 倖 2023-10-06 13:40:07
notebook Home 戻る  過去 未来