秋の道で
番田 

何も考えているわけでもないのだが、雨が降っている。バルコニーにつけたオーニングには雨が溜まっている。急に肌寒くなったものだった。一週間前は冷房をつけていた気がする。このような急激な気候の変化というのは明らかに人間のみならず動植物に悪影響をもたらしているような気が僕はする。例えば、秋や春に実をつける果物が、秋の中盤まで続く暑さによって実をつけなくなるというようなことが起きるかも知れない。そのようなことを考えていたのだ。時の流れを、ひどかった暑さがやわらぐと、早く感じる。そして、こんなふうに人は死んでいくのだろうと僕は思った。時間が止まった時の世界と言うのは、きっと、秋のような時間の流れの感覚があるのかもしれないのだ。でも、死んではいなかったからわからなかったのだ。例えばもう使われなくなった百貨店の解体前の姿だとか、借り手のいなくなったアパートの姿を思い出させられた。今日も、そんなふうに、生きていた。また、そして、あの場所に行ってみたいと思った。


地元にあったツタヤは、クラスメイトとよく会えた場所だったのだけれど、今はどこだろう。カードゲームをしている少年たちはよく見かけるけれど、店としての利益は出ているのかは謎だった。ネット上で今は言葉を交わしているのかもしれない。そこから土手を上がると、見慣れた川が流れていた。沈んでいく夕日に、なぜ、僕はここで暮らしてきたのだろうかと思った。


散文(批評随筆小説等) 秋の道で Copyright 番田  2023-10-05 01:31:27
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