水曜日
リリー
特別に悲しいという訳でもない日
行きつけのショッピングビルの喫茶店で
夜のムードなソフトジャズが
無機質に聞こえる 寂しさ
スプーンで掬って 舐める
ウインナーコーヒーの生クリームは
ほどよく甘い
会社と自宅からちょっと脱け出た真空で
取り出せば 嬉しそうなペンケースとノート
なぜか今夜、白紙のページに刻まれる「海」の時間
何時も
青磁色した拡がりに
三角の白波が立ち
苔むした岩を その底に沈め
許多の魚達を抱き
数百年 数千年前の
帆船の宝物を呑んでも居るだろう
ウエイトレスが清掃を始める二十時前
ノートを 閉じる私は一つのあぶくとなって
舞い消えてしまったのだった
席を立って店を出る私の
前になり後ろになり ついて来る
水曜日