裸で君の隣りにいると
ふたば







君が眠っているうちに
パンが焼きあがったみたいです
お母さんはお父さんを呼び
小さな女の子はテーブルを手早く片付けて
髪を撫でてもらいました

君が眠っているうちに
船は港に帰ってきました
汽笛がそれを教えたとき
おじいさんは手紙を読み終えました
古い机に古い椅子、古いことば、古い手紙

君が眠っているうちに
カーニバルは終わってしまいました
みんな家へと帰っていきます
靴屋さんは松葉杖をついて
理容師さんはかぶっていた白い布をおろして

君が眠っているうちに
列車は花の駅を出て行きます
みぎにひだりに揺られるうちに
荷台から野菜を落っことして
霧の国境を越えました

旅人は列車を降りたあと
空や海や草や道にたくさん名前を付け始める
子どもたちが旗を作りはじめた
なんて名前をつけたんだろう

君がきっと行くことのない
はるか遠い国にやがて雨が降る
裸で君の隣りにいると
雨の音が聞こえるようです







自由詩 裸で君の隣りにいると Copyright ふたば 2005-05-15 12:44:09
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