さんらー は (散文詩 10)
AB(なかほど)
みんなおらっちのこと「さんらー」ってよん
でるけど、おらっちにはもっとちゃんとした
「せいとく」っていうかっこいいなまえがあ
るのに。でもかんじはかけないからさ、「さ
んらー」でいいかあってもおもう。
とくいわざはうでずもうだったけど、ふつう
のとはちょっとちがうよ。ぽてとちっぷすた
べてたり、こーらのんでるわかいのがいたら
「それをかけてやらないかあ」って、おらっ
ちがぐーんてうでのばすと、むこうもまっす
っぐにぎりかえして、それでつったったまま
はじまるわけ。おらっちまけなかったさ。だ
って、「さんらー」だから。
ぽてとちっぷすはおいしかったね。おらっち
ががっこういってるころなんか、あんなもん
なかったけど、はたけのだいこんとかぬいて、
はしってにげながらたべたよ。こーらもおい
しいね。はじめてのんだのは「ぎぶみいこー
ら」っていってもらったやつだよ。かんじか
けないけど、えいごつかえるよ。
さけはおいしくないねえ。でもおらっち「さ
んらー」だから、つがれたらのむわけ。おら
っち、ちからもちだから、つがれるわけよ。
でもね、おらっちほんとはこーらのほうが。
ゆうべ、さけいっぱいつがれて、ふらふらに
なって、そっこうにおちた。あおむけってい
うのか、すぽってからだがはまって、どうに
もこうにもからだうごかなくて。でも、この
ままでも、まあいいかって。このままでも。
だって、かえっても「さんらー」ってよばれ
るだけだから。
でもさ、そしたらさ、よるのそらがきれいで
さ。みたことなかったからさ、おほしさまと
か、おつきさまとかさ。いつもしたになにか
おちてないかとか、おみせのまえで、ぽてと
ちっぷすとこーらもってるおとこがいないか、
とかしてたから。
とってもきれいでさ、なみだでてたみたい。
てもうごかなくて、ふくこともできなっかっ
たけど、「さんらー」は、あしたのこともか
んがえてなかったけど、こうやって、ほしみ
ながら、つきみながら、しんでいくのってか
っこいいっておもわないか? かっこいいん
じゃないかなあって。そしたらさ、からだじ
ゅうが ふわーって、とけるみたいだったさ。
あさになって、いぬがほえて、おらっちはま
だないていたかな。おとなごろくにん、おら
っちのからだをひきあげた。おかあは「いつ
までもこどもじゃないよ」って、おらっちを
なんかいもぶったけど、もういたくないから
ねえ。ぜんぜん、ぜんぜんいたくないよ。
「さんらー」は「さんらー」のままさ。しん
でも、「せいとく」にはなれないみたいさ。
さいきん、わかいおとこたちのほうから、う
でずもうしかけてくるけど、おらっちもよわ
くなってきたから、ぽてとちっぷすもこーら
も、もういいよ、もういいよ。
おかあ。またあそこのそっこうで、そらみて
きたいんだけど。ほんとにうごかなくなるま
で、みてきたいんだけど。ねむってきてもい
いかなあ。